去る 2 月 11 日(金)、IGDA Sig-Gloc 第 5 回勉強会に参加してきました。
今回のテーマは、「理想のローカライズツール/ミドルウェア」。
SIG-Gloc 勉強会参加は今回で 2 回目でしたが、少しはアウトプットできたのか・・・? どうなんだ・・・?
今回はラウンドテーブルで、私も翻訳者の立場からゲーム翻訳でローカライズツールを使用することのメリットについて発言する機会をいただきましたが、普段人前で話しなれないものでして、あんまりわかりやすくコメントできなかった気が・・・orz
覚書のためにも、自分の発言内容、そのとおりだと深く同意した点、補足などをきちんとまとめておくことにしました。
「
翻訳者の立場で、ゲーム翻訳にローカライズツールを利用することについて」
私は普段ゲーム翻訳だけでなくマーケティング翻訳もやってるんですが、マーケティングでは主に
SDL Trados にバンドルされてる SDLX という翻訳支援ツールを使ってます。作業中の文書内での 100% Repetition(まったくの同文は一度訳したら自動的にコピペしてくれる)、ファジーマッチ(90 %など、一部だけ同文の場合、勝手にコピペしてくれたり、一部を修正して訳を流用できる)などで翻訳作業を効率化できるほか、TM(Translation Memory)から過去の訳の一部または全文を流用したり、参考にしたりと、訳文の品質向上につながる機能を持つとても使い勝手のいいツールです。
一方ゲームの翻訳の場合、マニュアルや特典ブックレットなどの特殊な場合をのぞいて、ゲーム内テキストの翻訳素材はほとんどが Excel 形式で受け渡され、そこに直接入力しながら作業するのが一般的です。
ディスカッションでも出ていたとおり、現在普及している主なローカライズツールのほとんどでは Excel が使えません。厳密には、ツールそのものはExcel に対応はしてるんですが、ゲーム翻訳で一般的に活用されている Excel の使い方だと利用できない、ということなんですよね。
ゲーム翻訳で翻訳支援ツールが使用されることが少ない理由は、まずこの Excel という形式上の問題がひとつ、それから、TMを作っても適用できるケースがほとんどないので、あまり意義が見出せないよ、という声もよく耳にします。
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メリット -
それでも、現状は使われてないけど、私はやっぱりゲーム翻訳でも翻訳支援ツール使いたいです。TMからそのままでは使用できなくても、1 フレーズでも1 ワードでも訳語検索で参照できれば、文脈に適応させたうえでさらにブラッシュアップして品質の高い翻訳を効率よく作れるようになる。それに、新たにウンウン長時間頭を悩ませて作り出した自分的「名訳」がのちのリソースになると思うと、頭を悩ませるかいもあり、毎日の作業中もなにやら気分がいい、というメリットもあります(笑
そして
lye さんもおっしゃっていたとおり、シリーズ物などの場合、前作に登場しているキャラクターの一人称や口調を TM でさっと確認できると、とってもとっても助かります。エクセルのグロッサリーをいちいち検索する手間と時間を節約できる、というのもまったくそのとおりでして、頻繁な用語検索での時間ロス、集中力ロスが(笑)かなり大きいというのは日々作業中感じております。
というように、翻訳者の側での作業効率アップ、それに伴う訳文の品質向上については、私も普段から体感しています。
ただ、そのメリットを可視的に提示してみろと言われると、「た、体感しています・・・」としか言えなくなってしまうところが、確かに痛いところではあります・・・
それから事務的なことになりますが、5000 ワードのお仕事のオファーが来たとして、納期の見積もりもこちらでする場合、「2日半かなー」と見積もったところ、実際に素材を受け取ってから翻訳支援ツールを使ってみたら 100% Repetition がかなりあって実質作業するのは 4000 ワードしかなかった、なんていうこともよくあります。
お受けしていた場合は早めに納品すればいいわけですが、5000 ワードで判断してスケジュールが合わず断ってしまったけど、4000 ワードとわかっていたら、ちょっとがんばれば受けられたかもしれない、なんていうことも実際ありうると思います。
発注側は断られてしまえば別の翻訳者を探す手間が増え、翻訳者側も泣く泣く断っちゃったけど本当は受けられた、ということで、双方にとって実に、実に、もったいない・・・
ツールで正確な作業分量が判断できれば、ここの部分でも効率化につながるんじゃないかな、と感じております。
(補足: もちろん、100%マッチだからといってそのままコピペじゃ済まない部分もあって、ほぼ一から書き直しの場合もあります。ゲーム翻訳ではその性質上、特にそういう例に出くわす可能性は高いかもしれません。それでも、少し修正を入れれば済むことがほとんどで、効率アップにはなると思います。ラストシーンのほとんどが回想で、冒頭のコピペで済んだ、なんてこともあるので、ナイスなコーディネーターさんがそこを臨機応変に判断してくださったりすると、翻訳者としては大変ありがたいものですm(_ _)m)
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課題 -
さて、デメリット、というか課題ですが、やっぱり会場でも意見が出ていたとおり、「現状誰も使っていないツールを普及させるのは難しい」という点を私も一番のハードルと認識してます。「作業が効率化されるからと新しいツールを導入するにしても、お金はかかるし、一から使い方をマスターしないといけない。そのコストと労力を今契約している翻訳者さん全員に強いることを考えたら、別に使わなくていいよ」と言われれば、まったくもってそのとおりで、「でもね、でもね!」とは言えません。実際私もベンダーさんから新しくツールのご指定があり、予期せぬタイミングでお財布にかなりの打撃を受けたアウチな経験があります・・・ 基本的に使い方のサポートはしてもらえないので自力でマスターすることになり、労力も費やしました。ただこのケースでは、いつもお世話になっているベンダーさんで、あとからお釣りがくるほど利益が返ってくることがわかってましたので、今だけちょっと大変でも導入することに不満はありませんでした。今後ゲーム業界発の理想のツールが誕生する日が来たとして、この点が普及へのハードルになる可能性は否定できませんが、それ以上に大きなメリットがあると誰もが認識できれば・・・
・・・ああ、やっぱりメリットの可視化に戻ってしまいますね(笑
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こんなステキツールがあるよ!−
会場で名前が挙がっていた翻訳支援ツール「Felix」は私も気になっていて、過去に試用版を使ってみたことがあります。Excel 上でアドオンのように動いてくれるので、翻訳者側で勝手に使ってしまえるところがまずすばらしく魅力的です。また、複数の翻訳者で分担することが多いゲーム翻訳では、固有名詞と思われる単語やゲーム内で統一したほうがよさそうな単語を訳案と一緒に抜き出し、リストにして提出することがよくありますが、グロッサリー(用語集)が簡単に作れる、簡単に読み込める、ぱっと検索できる、という点はまさにゲーム翻訳向きだと思います。当然TMも使えて、翻訳者側での効率化という面ではほとんどカバーできると感じました。
(最近ベンダーさん指定のツールを新たに購入したばかりで、なるべくそれ一本で回せないか試行錯誤していたこともあり、まだライセンス購入はしていません・・・TT が、目下かなり真剣に検討してます。会場で実際に lye さんのデモ見て、想いはさらに募りました 笑)
Felix に関する詳しい説明は
lye さんが書かれたこちらの記事が詳しいので、ご興味のある方はぜひ一度ご覧ください。
金曜日のディスカッションでは、パブリッシャー、デベロッパー、それぞれの立場で考える理想のミドルウェアという観点でも意見交換がされましたが、そのあたりは私の守備範囲を大きく超えているので、今回は翻訳者視点、しかも私が普段の経験から体感している事柄に絞りました。
私が通っていた頃のスクールではツールまわりのことなんかは一切教えてもらえなかったので、ゲーム翻訳に限らず、翻訳支援ツールってどんなもん? どんなメリットがあるん?という方に、まず入り口として少しでも参考にしていただけたらと思います!
- 2011/02/13(日) 11:39:48|
- ゲーム翻訳
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